地積規模の大きな宅地とは|500㎡超の相続で見落とされる評価減
公開日:2026年7月12日|最終更新日:2026年7月12日
※本記事の事例は、守秘義務に配慮し特定を避けるため一部変更しています。本記事の内容は2026年7月時点の法令・通達に基づきます。
「前回の相続税申告で、土地の評価は下げられないと言われた」——その判断、今も正しいとは限りません。
平成29年度(2017年度)税制改正により「地積規模の大きな宅地」という新しい評価基準が創設され、2018年(平成30年)1月1日以後の相続から適用されています。これにより、三大都市圏で500㎡以上の土地を含む相続では、評価額を大幅に引き下げられる可能性が生まれています。しかしこの改正は、いまだに見落とされているケースが多くあります。
この記事の結論
三大都市圏で500㎡以上(その他の地域は1,000㎡以上)の宅地は、2018年1月1日以後の相続であれば「地積規模の大きな宅地」として評価額をおおむね20%以上引き下げられる可能性があります。すでに申告済みでも、申告期限から5年以内なら更正の請求で払いすぎた相続税を取り戻せる可能性があります。
当事務所では、この評価基準を適用した更正の請求によって320万円が還付された事例があります。
この記事は、次のような方に向けて書いています
- 過去に相続税を申告した土地が500㎡以上あった
- 前の税理士に「評価は下げられない」と言われた
- 2018年1月1日以後の相続について申告したが、土地評価を見直したことがない
- 申告後5年以内で、払いすぎの可能性を確認したい
当事務所では土地評価の事前診断を無料で行っています。申告書の控えを手元に置いてこの先をお読みください。
1. 実例:柏市Aさんに320万円が還付されるまで
千葉県柏市にお住まいのAさん(50代)が当事務所にいらしたのは、お母様の相続税を申告してから数か月後のことでした。
数年前のお父様の相続では地元の税理士に依頼して申告を済ませており、その経験を活かしてお母様の相続はご自身で申告されました。「同じようにやれば大丈夫だろう」とお父様の申告書を参考にされましたが、申告後、ふとした不安を感じて当事務所にご相談にいらしたのです。
「Aさん、この土地、評価を下げられる可能性がありますよ」
Aさんの表情が固まりました。「えっ……父の相続のときは、土地の評価は下げられないと税理士に言われましたよ?」
お父様の申告を担当した税理士の判断は、当時の税制では正しいものでした。しかしAさんはその「お手本」をそのまま使っていたため、現在の税制であれば適用できるはずの評価減が、まるごと見落とされていたのです。
Aさんのご実家の土地は約800㎡。「地積規模の大きな宅地」という評価基準を適用することで、評価額を約22%引き下げられることが判明しました。更正の請求の結果、Aさんの手元に戻った還付金は320万円でした。
Aさんは間違えたわけではありません。2018年から適用が始まった制度を知らなかっただけです。「前回こうだったから今回も同じ」という思い込みが、300万円を超える損失につながっていました。
2. なぜ見落とされたのか|税制改正の背景
改正前:「広大地」という難しい制度
2017年12月31日以前の相続では、広い土地の評価減には「広大地」という制度が使われていました。この制度は適用要件が非常に厳しく、面積だけでなく周辺の開発状況・行政的条件など複数のハードルをすべてクリアしなければなりませんでした。実務上も想定開発図面の作成や潰地率の検討まで求められ、専門家でなければ対応が難しい制度でした。
Aさんのお父様の申告を担当した税理士が「適用できない」と判断したのは、当時の基準では正しい判断でした。
改正後:「地積規模の大きな宅地」という新しい基準
平成29年度(2017年度)税制改正で広大地制度は廃止され、代わりに「地積規模の大きな宅地」という新しい評価基準が創設されました。適用されるのは、2018年(平成30年)1月1日以後に発生した相続からです。
旧制度との最大の違いは、「要件がシンプルになり、適用できる土地の範囲が大幅に拡大された」ことです。開発図面の作成や複雑な要件の検討が不要になり、面積・用途地域・容積率という客観的な基準で判断できるようになりました。
前担当の税理士の判断は「当時の基準では正しかった」。しかし税制は変わった。「前回こうだったから今回も同じ」という判断が、大きな損失を生むことがあります。
3. 「地積規模の大きな宅地」とは何か|要件と減額の仕組み
地積規模の大きな宅地とは、一定面積以上の土地について、将来分譲開発をした際にかかる造成費用や公共用地(道路・公園など)として使われる部分を考慮し、評価額を減額する制度です。
① 面積の要件
| 地域 | 適用に必要な面積 |
|---|---|
| 三大都市圏(柏市・松戸市・流山市・我孫子市など) | 500㎡以上 |
| それ以外の地域 | 1,000㎡以上 |
千葉県柏市をはじめとする東葛エリアは三大都市圏に該当します。「500㎡なんてうちには関係ない」と思っている方ほど要注意です。隣接する土地と評価単位を適切に判断することで要件を満たすケースもあります。
② 用途地域の要件
- 普通住宅地区・普通商業併用住宅地区に所在すること
- 市街化調整区域・工業専用地域は対象外
③ 容積率の要件
- 容積率400%以上(東京23区は300%以上)の地域は対象外
容積率は都市部では地域によって大きく異なります。一見適用できそうな土地でも、都市計画図を確認すると容積率の要件を超えていて対象外になるケースがあります。自己判断は禁物です。必ず都市計画図の確認を専門家に依頼してください。
減額の目安
この制度による減額は「規模格差補正率」という算式で計算され、三大都市圏では500㎡の時点で補正率0.80——つまり約20%の減額からスタートします。面積が大きくなるほど、減額率も大きくなります。
| 面積の目安(三大都市圏) | 規模格差補正率による減額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 500㎡前後 | 約20%(補正率0.80) | ここが減額の下限イメージ |
| 500〜1,000㎡ | 約20〜22% | Aさん(約800㎡)は約22% |
| 1,000〜3,000㎡ | 約22〜26% | 面積が大きいほど減額率は大きくなる |
| 3,000㎡超 | 26%超になる場合も |
※上記は規模格差補正率のみによる減額の目安です。実際の評価額は、路線価・奥行き・地形(不整形地補正等との併用)など複数の要素によって変わり、目安よりさらに下がる場合もあります。正確な試算は専門家による現地確認が必要です。
4. セルフチェック|あなたの土地は当てはまりますか?
国税庁の公式チェックシートをもとに整理しました。全ての項目が「はい」であれば、評価減が適用できる可能性があります。
| チェック | 確認項目 | 注意点 |
|---|---|---|
| □ | 【面積】 三大都市圏(柏市・松戸市・流山市など)で 500㎡以上 ありますか?(その他の地域は1,000㎡以上) | 土地の筆ではなく、評価単位を適切に判断した上で面積を確認します |
| □ | 【地区区分】 路線価図で「普通住宅地区」または「普通商業・併用住宅地区」に所在していますか? | 倍率地域の土地は自動的に「はい」 |
| □ | 【市街化調整区域】 市街化調整区域ではありませんか? | 都市計画法34条10号・11号に基づく開発行為ができる区域は「はい」 |
| □ | 【用途地域】 「工業専用地域」に指定されていませんか? | 用途地域が定められていない地域も「はい」 |
| □ | 【容積率】 東京23区なら300%未満、その他(柏市など)なら 400%未満 の地域ですか? | 容積率は市区町村の都市計画図で確認できますが、判断は専門家に依頼してください |
倍率地域の土地のみ、追加で確認
□ 5万㎡以上の一団の工場用地(大規模工場用地)ではありませんか?
→ 一般的な住宅地の相続土地ではほぼ該当しません。
✅ 全て「はい」 → 評価減が適用できる可能性があります。一度、専門家に試算を依頼してください。
❌ 一つでも「いいえ」 → 今回の制度は対象外の可能性がありますが、他の評価減方法がある場合もあります。まずはご相談ください。
出典:国税庁「地積規模の大きな宅地の評価」適用要件チェックシート
💬 申告済みの方で「全て該当する」と感じた方へ
払いすぎた相続税は取り戻せる可能性があります。ただし、更正の請求には申告期限から5年以内という期限があります。心当たりのある方は、まず期限の確認からどうぞ。
5. なぜ今も見落とされているのか|3つの理由
① 改正前の「広大地」感覚のまま判断している
2017年12月31日以前の相続で申告経験がある税理士や相続人が、新制度の存在を知らずに「うちの土地は適用できない」と判断してしまうケースです。Aさんのケースがまさにこれでした。
② 相続税を専門としていない税理士が担当した
ここで少し正直な話をさせてください。私自身、毎年の税制改正研修には欠かさず参加していますが、法人税法や、かつて得意としていた消費税法の改正内容を、以前のように細部まで追いきれているかといえば、正直そうではありません。
税法の改正は毎年、全分野にわたって行われます。すべてを同じ精度で追い続けることは現実的には難しく、幅広い分野を扱う事務所ほど、特定の税目の改正が「頭に残らない」という状況が起きやすくなります。
だからこそ私たちは相続税に特化しています。相続税法の改正だけを深く追い続けることで、制度変更を申告の現場で確実に活かせる。広く浅くではなく、狭く深く。
③ 面積だけで判断して合算を見落とした
「うちの土地は300㎡だから関係ない」と思っていても、土地の評価単位を適切に判断した結果、500㎡を超えるケースは少なくありません。筆ではなく評価単位で判断することが重要です。
6. まとめ
- 「前回は適用できないと言われた」という記憶は、今回は正しくないかもしれません。
- 平成29年度(2017年度)税制改正で「地積規模の大きな宅地」が創設され、2018年1月1日以後の相続から、適用できる土地の範囲が大幅に拡大されました。
- 三大都市圏(柏市・松戸市・流山市など)で500㎡以上の土地がある場合は、必ず適用の可能性を確認してください。減額の目安は約20%からです。
- 容積率・用途地域の要件があるため、自己判断せず専門家に都市計画図の確認を依頼してください。
- 隣接する土地と合算して500㎡以上になるケースも対象になることがあります。
- 払いすぎた相続税がある場合は、申告期限から5年以内であれば更正の請求で取り戻せる可能性があります。
Aさんは間違えたわけではありません。制度が変わったことを、誰も教えてくれなかっただけです。あなたの申告書を、今一度見直してみてください。私たちが一緒に確認します。
💬 「うちの土地はどうだろう?」と思われた方へ
申告書の控えと土地の所在地が分かれば、適用可能性の一次診断は無料で行えます。更正の請求の5年の期限が来る前に、まず確認だけでもどうぞ。
💡 この評価減が使えると判明した方へ
「地積規模の大きな宅地」が適用できる土地が見つかった場合、申告後5年以内であれば更正の請求によって払いすぎた相続税を取り戻すことができます。
ただし、更正の請求の期限は「5年」だけではありません。取り戻したい特例によっては、まったく別の短い期限が走ることがあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
→ 【関連記事】相続税の更正の請求、期限はいつ?配偶者控除と小規模宅地で違う注意点
よくあるご質問
Q1. 500㎡ちょうどの土地でも「地積規模の大きな宅地」は適用できますか?
はい、適用できる可能性があります。要件は「500㎡以上」なので500㎡ちょうども対象です。ただし容積率・用途地域の要件も満たす必要があり、減額率は地形や道路付けで変わるため、正確な試算は専門家にご相談ください。
Q2. 前の税理士に「適用できない」と言われた土地でも、見直す意味はありますか?
あります。2018年より前の「広大地」制度での判断だった場合、現在の基準では適用できる可能性があります。当事務所では他事務所で申告した案件のセカンドオピニオン診断も行っています。
Q3. 容積率や用途地域は自分で調べられますか?
市区町村のウェブサイトや窓口で確認できます。ただし容積率の判定には地区計画や建築基準法上の制限が絡む場合があるため、最終判断は専門家への確認をお勧めします。
参考リンク(国税庁)
※本記事は一般的な制度の解説であり、個別の土地への適用可否・減額率は評価単位の判定や都市計画上の制限等により異なります。実際の判断にあたっては税理士へご確認ください。

