【実例あり】空き家特例(3,000万円控除)が使えるかわかるチェックリスト|相続専門税理士が要件・売却スケジュールを解説
【この記事でわかること】
- 「不動産会社に行く前に税理士へ」——その理由と、順番を間違えると1,200万円を失う実例
- 空き家特例の要件と、あなたの実家が対象かどうか5分でわかるチェックリスト
- 売却から確定申告まで、期限を守るための正しいスケジュール
- マンション・老人ホーム・按分・特例の併用など、つまずきやすいポイント
「親から実家を相続したけれど、自分はすでにマイホームを持っている。誰も住む予定もないし、空き家のままでは固定資産税や管理費ばかりかかる――。」
そう考えて、とりあえず近くの不動産会社へ相談に行こうとしていませんか?実は、その"普通の行動"が、数百万円単位の税金差につながることがあります。その理由を、実例とともにお伝えします。
1.【空き家特例の落とし穴】1,200万円を損しかけた三姉妹の相続トラブル実例
先日、当事務所にご相談にいらした三姉妹のお客様のお話です。
【ご家族の状況】
ご実家の土地と建物は、20年前に亡くなったお父様の名義のままでした(相続登記が未了・未分割の状態)。その後はお母様がお一人で暮らしておられましたが、最近お亡くなりになり、空き家となった実家を三姉妹で売却することになりました。
三姉妹が知り合いの司法書士に相談したところ、こう勧められました。
「お母様名義に一度変更すると、登記費用が2回分かかってしまいもったいないですよ。亡きお父様から直接、三姉妹へ名義変更して、共有名義で売却しましょう」
一見、登記費用(数万〜十数万円)を節約できる賢い方法に聞こえます。三姉妹も「専門家が言うならそれがお得なんだな」と信じきっていました。
そのままでは空き家特例が一切使えなくなるところだった
しかし、税務の視点が完全に抜け落ちていました。空き家特例は、「亡くなった方(被相続人)が直前まで一人で住んでいた家」であることが絶対条件です。
お父様から直接相続してしまうと、特例の対象は「20年前にお亡くなりになったお父様の相続」になります。お父様が亡くなる直前はお母様も同居していたはずですから、「一人暮らし」の要件を満たさず、特例から完全に外れてしまうのです。
数万円の登記代を節約して、1,200万円を失うところだった
今回のケースでは、相続人が3人のため令和6年以降のルールが適用され、特例の控除額は1人当たり最大2,000万円。これを譲渡所得税(約20%)で計算すると……。
2,000万円 × 約20% × 3人分 =
約1,200万円の差
数万円の登記代を節約するために、1,200万円を手放すことになるところでした
あえて「お母様を経由して三姉妹へ登記する」正規ルートをたどることで、三姉妹は無事この恩恵を受けられました。相続が絡む売却では、目の前の小さな出費ではなく、「最終的な税金全体」を見渡した判断が不可欠です。
2. 空き家特例(3,000万円控除)の仕組みと要件
正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」。実家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、通常は約20%の税金(譲渡所得税・住民税)がかかります。しかし一定の条件を満たすと、売却益から最大3,000万円を差し引けるのがこの特例の最大のメリットです。
たとえば、実家を売って2,000万円の利益が出た場合、通常なら約400万円の税金がかかります。特例を使えば課税対象がゼロになり、税金も一切かかりません。
マイホーム特例(居住用3,000万円控除)との違い
名前が似た「マイホーム特例」と混同されがちですが、まったく別の制度です。
| 比較項目 | 空き家特例 | マイホーム特例 |
|---|---|---|
| 誰が住んでいたか | 亡くなった親(被相続人) | 自分自身(売主) |
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前 | 制限なし |
| 建物の種類 | 戸建てのみ | マンションも可 |
| 売却時の状態 | 耐震改修または更地で売却※ | 制限なし |
| 適用期限 | 相続から3年目の12月31日まで | 住まなくなってから3年目の12月31日まで |
※令和6年(2024年)以降、買主側が翌年2月15日までに耐震改修または解体を行う場合も対象になりました(後述)。
⚠️ 母屋と離れがある場合:特例が使える「土地の範囲」は按分される
敷地内に母屋と離れのように2棟以上の建物がある場合、特例が適用される土地は「敷地全体」ではありません。家屋平面図に記載された床面積をもとに、次の計算式で面積を按分します。
特例が使える土地の面積 =
敷地全体の面積 ×(母屋の床面積 ÷ 全建物の床面積の合計)
具体例:敷地200㎡、母屋80㎡、離れ40㎡の場合
→ 特例が使える土地 = 200㎡ ×(80÷120)= 約133㎡分のみ
残り約67㎡分(離れに対応する土地)は対象外となり、通常通り譲渡所得税がかかります。まとめて売却する場合でも、この按分計算は必ず行われます。
【重要】「建物」と「土地」の両方を相続していることが必須
空き家特例には「建物と土地のセットで相続すること」という条件があります。
たとえば「建物はいずれ取り壊すから」と長男だけが建物を相続し、土地を長男と二男で共有した場合。長男は特例が使えますが、二男は土地しか相続していないため特例が一切使えません。遺産分割協議の段階でこの知識がないと、後から取り返しがつかない事態になります。
令和6年(2024年)改正の2つのポイント
① 相続人が3人以上の場合、控除額が「1人2,000万円」に引き下げ
これまでは人数に関わらず最大3,000万円でしたが、令和6年以降は3人以上の場合に上限が2,000万円になります。
② 売主の事前解体・耐震改修が不要に(要件の緩和)
現状のまま引き渡し、売却の翌年2月15日までに買主が耐震改修または解体を行えばOK。売主の事前資金負担がなくなりました。
3. 空き家特例セルフチェック|あなたの実家は要件を満たしているか
国税庁が専用のチェックシートを公開するほど要件が細かい制度です。基本の6項目を確認してみてください。当てはまる場合はクリックしてチェックを入れてください。
0 / 6 項目チェック済み
✅ 6項目すべて該当 — 適用できる可能性があります
ご実家は空き家特例を使える可能性が非常に高い状態です。ただし、相続登記の方法や売買契約の条件を一つでも間違えると特例が使えなくなります。登記や売却を進める前に、税理士への確認をお勧めします。
⚠️ 該当しない項目があります — 自己判断は禁物です
すぐに諦めないでください。「老人ホームに入っていた」「共有名義で相続してしまった」などのケースでも、要件を満たせば適用できる場合があります。遺産分割前であれば軌道修正も可能です。「使えるはずの特例を見落として1,000万円以上の税金を払ってしまった…」とならないよう、まずは専門家にご相談ください。
4. 空き家特例の売却スケジュール|タイムリミットから逆算した手順
空き家特例には絶対に守らなければならない期限があります。「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却を完了させることです。たとえば2024年4月に亡くなった場合、期限は2027年12月31日。四十九日・遺品整理・測量を進めているとあっという間に時間が経ちます。
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【ステップ1】相続発生〜遺産分割前:税理士へ相談
遺産分割協議を始める前に税理士へ相談し、「誰がどんな割合で相続すれば特例が使えるか」を確定させます。ここが最も重要な分岐点です。 -
【ステップ2】遺産分割〜相続登記:司法書士へ依頼
確定した「特例が使える分割割合」をもとに、司法書士に名義変更(相続登記)を依頼します。 -
【ステップ3】売却活動〜売買契約:不動産会社へ依頼
名義変更が完了したら不動産会社に売却を依頼します。このとき、特例を受けるために市区町村(市役所等)で「被相続人居住用家屋等確認書」を取得する手続きが必要です。申請から交付まで1週間程度かかります(確定申告時期は混雑するため余裕をもった申請をお勧めします)。売却活動を始める前の段階で窓口に確認しておくと安心です。詳細は各市区町村の窓口へご相談ください(例:柏市の案内ページ)。
また、売買契約書を作成する段階になったら、ハンコを押す前に契約条件で特例が使えるかを改めて確認してください。 -
【ステップ4】売却の翌年2〜3月:確定申告
売却が完了したら、翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に確認書などを添えて税務署へ申告します。添付書類が非常に多いため、早めに準備を進めてください。
5. 空き家特例に関するよくある質問
- 昭和56年以降に建てられた実家ですが、特例は使えませんか?
- 空き家特例(3,000万円控除)は昭和56年5月31日以前の建築が対象のため使えません。ただし相続税を支払っている場合は「取得費加算の特例」など別の方法で譲渡所得税を抑えられる可能性があります。まずはご相談ください。
- 親が住んでいたのはマンションです。空き家特例は使えますか?
- 使えません。空き家特例は「区分所有建物登記がされている建物」には適用できないと法律で明記されています。耐震性の低い古い空き家の増加抑制を目的とした制度のため、修繕計画があるマンションは対象外です。なお「区分所有登記」ではなく「共有登記」の建物であれば適用可能なため混同しないよう注意が必要です。二世帯住宅でも区分所有登記されている場合は利用できません。
- 亡くなる前に老人ホームに入っていた場合、空き家特例は使えませんか?
- 要件次第では使えます。①要介護・要支援認定を受けていたこと、②老人ホーム等への入居直前まで自宅に住んでいたこと、③入居後に自宅を他人に貸していないこと、など複数の条件を満たす必要があります。「どうせ使えないだろう」と諦める前にぜひご相談ください。
- 土地はAとBで共有相続、建物はAのみが相続して取り壊した場合、Bは特例を使えますか?
- 使えません。「被相続人居住用家屋および敷地等の両方を相続していること」が要件です。Bは土地しか相続していないため対象外となります。取り壊す予定だからと安易に一人だけで建物を相続すると、他の相続人が特例を使えなくなります。相続登記の前に必ずご相談ください。
- 母屋と離れの2棟を壊して更地で売れば、税務署にはわからないのでは?
- それは大きな誤解です。更地で売却しても市区町村役場は「家屋平面図」を保管しており、建物が存在していた事実は行政側で把握しています。税務署は申告内容に疑義があれば市区町村に照会できるため、「壊せば履歴が消える」ということにはなりません。また2棟ある場合は本文の通り按分計算が行われるため、「まとめて壊せば全部特例が使える」という考えも誤りです。必ず事前にご相談ください。
- 空き家特例と相続税の「取得費加算の特例」は同時に使えますか?
- 同一の譲渡に対して両方を同時に適用することはできません。ただし、一団の土地に母屋と離れなど複数の建築物がある場合には、母屋(住宅部分)の土地に空き家特例を、離れに対応する土地に取得費加算の特例を、それぞれ適用することができます。
6. まとめ|売買契約書にハンコを押す前に
空き家特例は、実家を売却するご家族にとって数百万〜1,200万円単位で手元に残るお金が変わる、非常に強力な制度です。しかしその強力さゆえ、適用要件は複雑で厳格です。
「知っていたか、知らなかったか」「正しい順序で手続きを進めたかどうか」——それだけの違いで、払う必要のなかった多額の税金を納めることになってしまう方が後を絶ちません。
登記の手続きを進める前に。不動産会社へ行く前に。そして何より、売買契約書にハンコを押す前に。
「実家の売却を検討しているが空き家特例が使えるか確認したい」「相続登記の前に税務面を確認してほしい」「遺産分割の仕方について税金面からアドバイスしてほしい」——こうしたご相談は早めにいただくほど選択肢が広がります。初回無料相談を受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。

